職員の読書日記 職員の読書日記

このページでは、職員の読書日記を紹介いたします。
発達協会の職員である私たちが、出会った本の感想などを紹介するページです。


第21回

「ぼくらの中の発達障害」

著者:青木省三/発行元:筑摩書房/定価:本体840円+税 )


公益社団法人発達協会 療育部 染谷里沙(精神保健福祉士)

みなさんは、「こうあるべき」と、強く思うものがありますか?「人とのコミュニケーションが上手くいかない」と、感じたことがありますか?私たちには、程度の差こそあれ、発達障害の特徴と同じ内容の悩みや、経験があるのではないでしょうか。著者の青木省三先生は、「発達障害」を、一つのあり方、生き方に近いものと捉え、発達障害の人、そしてその周囲の人へのアドバイスを、直接語るように届けてくれます。

青木先生は、青年期を専門とする精神科医です。そのため本書には、「同級生の会話や冗談が分からず苦しんだ高校生」、「人との距離の取り方が難しい中学生」、「予定変更が苦手な女性」など、主に中高生以上の広汎性発達障害の方の事例が多く紹介されます。青木先生と青年たちとの具体的なやりとりと、青木先生の深い考察は、「発達障害」への理解を整理し、短所として目立ちやすい彼らの特徴を、「こう見れば、むしろ良さじゃないか」「それは、私たちにもあることじゃないか」と、気づかせてくれます。本書は、発達障害への理解の仕方を変えることで、人と人とをつないでくれる架け橋のようです。

「発達障害を持つ人が生きる文化は、自分とは異なった文化である。(中略)だがその文化は、実は僕たちの中にもある。」心に残った、本書のことばです。「発達障害」を知ることは、自分を知ることなのかもしれません。そうであればそれは、私たちの人生の豊さにも、つながっていると思いませんか?




職員の読書日記一覧のページへ