社会性の発達について

■「だめよ」の声かけに、大人をたたいてしまう

今回は、人への意識があるけれど、人からの働きかけを受け入れられず、八つ当たりをする多動傾向のある2歳になる男の子の社会性を考えてみます。具体的な指導のポイントについてもあわせてご紹介します。

今回は人への意識はあるけれど、人からの働きかけを受け入れられず、八つ当たりをする多動傾向のある子の社会性を考えてみます。

●「だめよ」の声かけに、大人をたたくOくん
 Oくんは、2歳になる男の子。2歳を過ぎてようやく歩くことができるようになりましたが、運動発達の遅れとともに多動傾向が出てきました。
ことばはまだしゃべりませんが、こちらの言っていることが少しわかり始めています。「バイバイ」などの声かけに対して、手をふる、ということはできませんが、たいてい両手を打ち合わせたりしているので、それが本人としては「バイバイ」のつもりのようだ、ということでした。
また、行きたいところを指さして訴えている、など指さしができるのですが、「ちょうだい」と言われても、持っているものやボールを人に渡したりすることはできません。人への興味や関心はあり、じっと大人のことを見つめ、何しているんだろう、という感じで様子をうかがっています。

 大人に抱かれているときはおとなしいのですが、降ろされた途端にあちこちに動き回り始めます。そのため、おもちゃや教材を出して遊ぼうと試みても、ひとつのことにじっくり関わることができません。
手先の動きもスムーズではなく、モノを握り続けることができずに、手首をくるりとひねるようにしながら、その勢いでモノを斜め後ろに放り投げてしまいます。遊び方も、缶の中に入っているものを「ジャーッ」と出し、ちらかしては別のものを探し、棚の中から引っ張り出しては、ちらかし、のくりかえしになってしまいます。
また、うろうろと動きながら、さわられると危ないものにも手を出すので、「だめよ」と言って止めると、そう言った大人をたたいてきます。お母さんは、「だめよ」と言わないほうがいいのではないかと悩んでいます。

 さて、Oくんの発達を考えてみます。運動、認知、言語、社会性など領域別に発達を考えてみると、歩くことができるなど粗大な運動の発達が良好なわりには、手や腕の使い方が未熟です。おもちゃなど、ものを持って扱うことがうまくできないので、とにかくちらかして遊ぶしかないのだろう、と考えられます。「バイバイ」に対しての反応も、手を振るという動きがうまくできないためなのでしょう。
また、おしゃべりはまだできませんが、ことばの理解という点では、「バイバイ」がわかっているようだったり、「だめよ」に対して、八つ当たりといえる行動が出てきています。言われたことがわかるからこその行動であり、理解力・社会性は1歳前後といえます。

●指導のポイント
(1)「だめよ」はきちんと伝え、ほかの遊びに誘う
 お母さんが悩んでいる八つ当たりといえる行動について、「だめよ」を言わずに生活をするのは無理なことと言えるでしょう。それに、何を触ってもいい、危なくない、という空間で過ごすことは、これからもできないと思います。また、「だめよ」と言われて、それを触らない、という経験は、自分の行動や衝動を抑える、ということを学ぶ場面にもなるので、多動な傾向のあるOくんのような子にとっては、とても大切な練習の場面です。
 「だめよ」と言った後、八つ当たりをしそうになった時には、大人はたたかれる前にできるだけ、その手を止めるようにします。黙ったまま手を止めてしまい、たたかせないようにした後で「これで遊ぼう」と遊んでもいいものやおもちゃに誘います。

(2)手の使い方を教える 
 ものを使った遊びがなかなかうまくできないので、手を使う練習をたくさんしていく必要があります。たとえば、お片づけ、としてものを中に入れる、ものを持って運ぶなど意識的に手を使う場面を増やすようにします。
「ものを斜め後ろに放り投げる」という反射のようにもみえる手の動きを、目的的な動きに変えていけるように少しずつ練習していきます。

(3)手を使った運動を教えていく
 小さなものを運んだり、入れたり、といった操作する練習とともに、手を使う運動も大事です。ぶらさがる、手押し車など手をつかった運動に、「10かぞえるまでね」とか「あそこまでね」など一定の距離や時間とりくめるよう練習していきます。

 

■月刊 発達教育より 一松 麻実子(発達協会)言語聴覚士

 

 

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