運動指導の進め方

筋力

■目標を決めてレベルアップを目指す−ゆりかご・ブリッジほか

■腕の力を強くする運動−「オットセイ」「手押し車」「ぶらさがり」

筋力を高める運動−ふっきん・トンネル・スクワット

■筋持久力を高める運動−ワイパー・姿勢変換ほか



■目標を決めてレベルアップを目指す−ゆりかご・ブリッジほか

 筋力を高める運動は、練習を積むと結果が数値に表れます。レベルアップをしたことが自分でもわかりやすいのが特徴です。様々な種目とそのレベルアップのポイントをご紹介します。

 「やろうとする」時代に突入した子ども達のための運動種目を紹介していきます。昨年度までの種目でも十分対応できますが、年齢が上がってきて、それまでの種目が上手になった子ども達には、新たな種目を教えていきましょう。また、昨年練習を繰り返してもなかなかコツが飲み込めなかった種目は、同じ要素を含む他の種目に切り替えて、気分転換をしてみてもよいと思います。

 今回は、筋力を高める運動を紹介します。筋力を高める運動種目は、練習を積んでいくと筋力アップがはっきりと数値に表れるものが多いので、レベルアップしたことが自分でもわかりやすいはずです。
例えば「腹筋」なら、30秒間に何回できたか回数を記録していくと、日を追って確認できますね。また、体に力を込めるという点では苦しいこともあるので、できた時の子ども達の喜びは大きいはずです。「やろうとする」子ども達に自分で目標に向かって努力するよう働きかけるきっかけになると思います。


●ブリッジ
目的・全身の筋力を高める

おなじみの運動です。基本の姿勢は、手の平、足の裏をしっかりと床につけ、体を持ち上げます。その時に首に力を入れすぎてしまわないように気をつけます。レベルアップのポイントは表のように、
@頭が床から浮く
A三十秒保つ
B片足を上げる(図1)
C膝を閉じる
D移動する

となります。Cの膝を閉じるレベルではわかりやすいように膝の間に小さいボールやぬいぐるみをはさんで落とさないように気をつけさせるとよいでしょう。Dは手足を動かしてブリッジの姿勢を保持したまま歩くことをいいます。足で踏ん張って、頭側に移動するほうがやりやすいようです。

図1 ブリッジできたら丸をつける表
 

●ゆりかご
目的・背筋力を高める

うつ伏せになり、手で足首を持って上に引っ張ります。顔を前に向け、あごと膝を床から離します(図2)
足首を曲げてしまう人が多いのですが、足の甲から膝までまっすぐにしてひっぱるように伝えていきます。
その時は、大人が一緒に足首を持って、力を入れる方向を伝える必要があります。
あごから床までの距離と、膝から床までの距離を測定して、数値アップを目指します。

図2 ゆりかご

●クレーン
目的・腹筋力を高める

床に膝を伸ばして座ります。手はお尻の横について、膝を伸ばしたまま足を床から離します。
@肘を伸ばす
A膝を伸ばす
B20秒保つ
C床から20p〜30pの間で保つ
D手をお腹の上において保つ(図3)

がレベルアップのポイントです。
 足を上げすぎてしまうと、腹筋をあまり使わずに済んでしまうので、Cの高さの目安は大事なところです。いすなど丁度よい高さのものを足の所に置いて、つま先をつける目標にすると、子ども達自身が意識して取り組めます。

図3 クレーン

●すべり台
目的・腹背筋の力を高める
    ・腕で支える力をつける

この運動も膝を伸ばして座り、手をお尻の横につく姿勢からスタートです。合図に合わせて、膝を伸ばしたままお尻を上げます(図4)
 @顔を前に向ける
 A膝を伸ばす
 Bつま先から肩までまっすぐにする
 C1分間保つ

がポイントです。すべり台のように肩からつま先までまっすぐにできることが理想の形ですが、お腹も膝も曲がってしまう人には、まずは膝を伸ばすことから教えていくとよいでしょう。

ブリッジ、クレーン、すべり台では、それぞれの目標となる時間を示しましたが、姿勢が定まってきたら、時間を延長してみましょう。

図4 すべり台

 

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腕の力を強くする運動−「オットセイ」「手押し車」「ぶらさがり」

 「ズボンをはく」「ごはんを食べる」など私たちが日常する動きは、指先を使うものがほとんどです。腕の筋力は、指先の動きの土台となります。今回は、『筋力』の中でも、腕の力をつける運動を紹介したいと思います。
 私たちが日常する動きは、指先を使うものがほとんどです。例えば、ズボンをはく動作ひとつにしても、ズボンをしっかりと握らなくてはなりません。食べるときも、スプーンや箸の操作を手指で行います。けれどもこのような指先の動きには、手指を支える腕の力が必要となります。指先を動かす支点として腕がしっかりと安定していないと、細かい動きはとれません。つまり、腕の筋力は、指先を動かすための土台というわけです。
 今回は、『筋力』の中でも、腕の力をつける運動を紹介したいと思います。

●オットセイ
目的 ・腕の力をつける
  ・「はじめ」と「おわり」を明確にする

 床にうつ伏せに寝て、手を顔の横につき、「はじめ」の合図で腕をのばして上半身を起こします(図1)
大人が10まで数える間、がんばって体を支えましょう。そして、「おわり」の合図で肘を曲げてうつ伏せになります。

・ 指先を内側にむけて
 手の平を「ハ」の字にする

・ 指先をのばす

・ 顔は前を向く

・ 足首をねかせる

・ お尻の力をぬく

という、5点に気をつけて取り組んでください。4〜5回くり返して行ないます。
 「オットセイ」が上手になったら、腰を上げて腕とつま先で体を支える「腕立て姿勢」に挑戦です(図2)
この運動では、腕で体重を支えるだけでなく、頭からつま先まで体をまっすぐにすることで、腹背筋の力もついていきます。

●手押し車(手歩き)
目的 ・腕支えの力をつける
  ・ 筋持久力をつける

子どもはうつ伏せに寝て、大人がその子の足首を持ち上げます。それと同時に、子どもは腕をのばして体を支えます(図3)
・ 指先をのばす
・ 顔は前を向く

上の2点に気をつけて取り組んでください。
 幼児では、お母さんが足首を持つと、自分の体重を支えきれずつぶれてしまう場合があります。そんな時には膝を持って、腕にかかる体重を軽くしてあげましょう。また、お尻に力を入れて、腰を上げてしまう子には、お尻を下げるように介助を工夫してください(図4)。 
 ゴールに好きなオモチャをおいて「廊下を2往復する」など目標を示して行なうとよいでしょう。
 持続して進めるようになったら、手押し車の裏バージョン「一輪者」も加えてやってみてください。

●ぶらさがり
目的 ・握力、指先の力をつける
  ・ 筋持久力をつける

 はじめに、握ることを教えます。子どもに大人の指をつかませて、顔が向かい合うぐらいまでひっぱりあげます。この方法で、握ることができるようになったら、次に低い鉄棒で地面に足をつけたまま、体を傾斜させ、腕をのばして体を支える練習をします(図5)。持続して握ることがわかってきたら、短い棒を握らせて、大人が両端を持ち上げてひっぱりあげてあげましょう。子どもの体が重い場合は、棒の片方を棚にひっかけたり、大人二人が両端を持って、一緒に持ち上げてもいいでしょう。
 ここまでできたら、自分の背よりも高い鉄棒に挑戦です(図6)。「10数えるまで」と数を使ったり、タイマーを使って、1分間計測するまでなどと目標を示して、努力できるとよいですね。 
 ぶらさがりを行なう場合は、特に安全面に気をつけてください。鉄棒の下に物がないかどうか、子どもの表情や、握り具合はどうか、常に大人が目を配って行なってください。
 ぶらさがりのレベルアップとしては、「うんてい」や登り棒があります。どちらも公園に設置されていることが多いので、取り組みやすい運動だと思います。

 

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筋力を高める運動−ふっきん・トンネル・スクワット

立つこと、歩くことをはじめとして、からだを支え、動きの基本となるのが筋力です。それぞれの目的と進め方について紹介します。

 普段、何度も繰り返すことの多い動き−立つ、歩く、走る−これらはすべて、からだを支えている筋力による動きです。食事のときに椅子に座っていられるのは、腹筋と背筋を使って姿勢を保っているからです。階段を昇るときは足の筋力、物を持つときは腕の筋力を使っているのです。筋力はすべての動きの基本、動きの支点というわけです。
 筋力というと「筋肉モリモリの体育会系」というイメージを思い浮かべる方もいるでしょう。しかし子ども達の筋力とは、のもの。いろいろな動きが自分でできると子ども達の自信にもつながります。
 そこで動きの基本『筋力』について考えてみたいと思います。ここでは腹筋、背筋と足腰の筋力をたかめる運動を紹介します。

●ふっきん
目的 腹部の筋力をつける。
    「はじめ」「おわり」などの合図にあわせて動く。

 子どもと手をつなぎ、からだを引き起こすところからはじめます。腰に負担がかからないように膝をまげて行いましょう。
 まだ筋力がついていない子ども達は、まちがった力の入れ方をしがちです。からだの使い方を誤ったまま運動を続けると筋力をつけるどころか、からだをいためてしまいますから注意が必要です。腹筋運動を行う際は次のことをチェックしてください。

・起き上がるときに肘をついていないか。
・上半身の反動を使っていないか。
・あごが上がってからだをそらしていないか。
・背中を板のようにつっぱらせていないか。

 このような場合、背中の下にまくらやクッション、二つ折りにした座布団などを入れて行うようにします。2冊の電話帳を組み合わせて傾斜をつけたものでも良いでしょう(図1)
 動きに慣れてある程度一人で起き上がれるようになったら、つないだ手を離し、おなかの前で組んだり、頭の後ろで組んだりとレベルアップしてみましょう(図2)
 回数を増やしていくことも良いと思います。はじめは5回〜10回、だんだん増やしていき30回くらいを目標にしてください。
 「起きる」、「寝る」という大人のかけ声を聞いて動く約束をすると、コミュニケーションの練習になります。

図1
図2 腹筋運動

●トンネル
目的 腹筋力、背筋力をつける。
    手足でからだを支える力をつける。

 おなかを上にして手足4本でからだを支える運動です(図3)。腹部をあげることで腹筋、背筋両方を使います。おなかが床と平行になるくらいまで上げることが目標です。
 トンネルでは次のことに注意します。

 ・手のひら、足の裏がしっかり床についているか。
 ・頭が後ろにのけぞっていないか。

一定のあいだ(10カウント数えるあいだなど)姿勢を保てるようになったら、この姿勢を崩さずに片足または片手を上げるバランスや重心移動の練習にもトライしてみましょう。

図3 トンネル

●スクワット
目的 足腰の力をつける。
    大人と一緒に動く。

 立ちしゃがみの運動です。立ったり、座ったりは日常的な動きですから比較的わかりやすい運動のひとつといえるでしょう。
 しゃがむことが難しい場合は低めの椅子や台に座って立ち座りの形からはじめます。大人が向き合い、手をつないで一緒に行うと動きが伝わりやすくなります。
 立ち座りがスムーズになったら、両手を頭の後ろに組んで立ちしゃがみの練習をしてみましょう(図4)
 スクワットの注意点は次の二つです。

  ・背中がまがり頭が下をむいていないか。
  ・立ち上がるときに反動をつけていないか。 

上手にできるようになったら、かかとを上げたまましゃがむ練習です。前に重心をかけることを教えるとき、子どもの手を前に引いたり、腰を支えたりするとわかりやすいでしょう。
図4 スクワット

 立ったりしゃがんだりする動きをゆっくり行うと足の力をさらに使うことになり、足腰の筋力アップには良い練習です。学童期くらいの子どもにはできそうですね。
 一緒にする相手を見て模倣したり、声の合図に合わせることでコミュニケーションの練習にもなります。

 まずは1種目、回数を決めて(はじめは少しずつ、徐々に回数を増やして)毎日取り組んでみてください。

■月刊 発達教育より


■筋持久力を高める運動−ワイパー・姿勢変換ほか

筋持久力には、一定の姿勢を保持する静的なものと、継続して反復動作をする動的なものがあります。動的な種目には、全身持久力を兼ねているものがたくさんあります。取り組むときはどちらも時間や回数を増やしていくことでレベルアップをはかれます。

●腕立て姿勢
目的
・ 筋持久力を高める
・ 腕支えの力をつける

うつ伏せになり、手の平を肩のすぐ横についた姿勢から体を持ち上げます。レベルアップのポイントは(表1)にあるようになります。

 @姿勢を保持する(1分間以上)
 A肩から背中、足までまっすぐにする
 B顔を上げる
 C手指を伸ばして支える
 D休むとき、腕から上半身を下ろす

お尻を上げてしまい、体を「くの字」にしている人が多いのですが、自分の体がどうなっているかイメージがつかないことが原因のようです。お尻の上に大人が手をかざして、「手につかないように」姿勢をつくるように働きかけるといいでしょう。また逆に、お腹を下げすぎてしまう人には、お腹の下にティッシュの箱をおいて「つぶさないように」気をつけさせるのもひとつのやり方です。
1分間姿勢の保持ができたら、さらに時間をのばしていくのもよいですが、「腕立て伏せ」にレベルアップしてもよいでしょう。「腕立て姿勢」でポイントに気をつけて取り組むことで基本の姿勢をマスターしたら、「腕立て伏せ」も効果的に行なえるはずです。
また筋力の弱い小学校低学年の子ども達や女性には「四つばい腕立て伏せ」をおすすめします。四つばいで行なうので「腕立て伏せ」よりも楽ですが、繰り返すことで、筋力アップできます。

腕立て姿勢  
姿勢を保持する(1分間以上)  
肩から背中、足までをまっすぐにする  
顔を上げる  
手指を伸ばして支える  
休むとき、腕の方から上半身を下ろす  

(表1)    ※できたら空欄に丸をつける

●ワイパー
目的
・ 筋持久力を高める
・ 腹背筋を高める

仰向けに寝て、足を床から垂直になるようにあげます。その時お尻は床から離れないようにします(図1@)。次に手の平を床に着いて体を支えながら、ゆっくりと上げた足を右に倒します。そしてまた上に足を戻し、今度は左にゆっくりと倒します(図1A)。この時、背中が床から離れないよう、気をつけて下さい。左右に足を倒す動作を繰り返すことでお腹に力が入りますが、その時に息を止めてしまわないように気をつけましょう。1分間に何回できるか基準の回数を測定したら、記録アップを目指しましょう。

●姿勢変換
目的
・ 筋持久力を高める
・ 全身の持久力を高める

「仰向けに寝る→立つ→うつ伏せに寝る→立つ」の連続した4つの姿勢が1セットです。まずは動きに慣れることが大切です。寝るときはしっかり膝を伸ばすこと、立つときも中腰で終わりにせず、背筋を伸ばして気をつけをすることがポイントです。基本の動きが身についたら、合図に合わせて動きます。合図に合わせることで、一定のリズムで動くことが学べます。次に、時間と回数を設定し記録を伸ばしていきましょう。例えば、10分間に30回以上、40回以上、60回以上と一定の時間に取り組む目標セット数を決めて行なうとよいと思います。その際、体力や年齢に合わせて時間を決めます。まじめに行なうと、1分間でも息があがる運動です、


●バービー
目的
・ 筋持久力を高める
・ 瞬発力を高める
・ 全身の持久力を高める

「床に手を着いてしゃがむ→手を着いたままジャンプして後ろに足を伸ばす(腕立て姿勢)→着いた手の方にジャンプして足を戻す→立つ」の4つの動作が1セットです。(図2)これも姿勢変換と同様に動きに慣れることからはじめます。ジャンプして後ろに足を伸ばすときにあまり飛ばずに足が曲がっている場合は、床にラインとなるものを設け、そのラインを飛び越すように伝えるとわかりやすくなります。基本の動きを身に付け、合図にも合わせられるようになったら、基準の回数を計測し(例えば5分間に何回出来たか)、その回数から目標回数を定めて練習していきます。どれくらい記録が伸びるか、1年間を通してみると、成果がわかると思います

■月刊 発達教育より

 

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