――そこで今回、より多くの親や保育者に対して「関わりことば」を知ってほしいということで、読みやすいコミック版を発行することにしました。齊藤さんは「関わりことば」についてご存知でしたか?
齊藤:お仕事をいただいた時は、もう子どもが大きくなっていたので、「関わりことば」を子育て中に意識的に取り入れたことはありませんでした。マンガを描くにあたり、コミック版の元となった『子どもが伸びる 関わりことば26』を読ませていただきましたが、その時、いろいろな場面がバーっと頭に浮かんできました。その場面というのは、私には発達に障害のある息子の子育て経験があるので、その息子との場面も多いのですが、下の娘のことだったり、子どもの友達のこと、自分の小さい頃のことだったり。だからこそ、「関わりことば」って、発達障害がある、ないに関わらず、親が知っておいて子どもに教えていくべき言葉だなと痛感しました。もし子育て中に私がこれを知っていたら発達に障害のある息子だけでなく、下の娘にも取り入れていきたかったなと思います。
例えば「いっしょに」の場合、「いっしょに」をそもそも理解していないからできない場合があったりとか、「いっしょに」ができるようになると、その先「模倣をする、他の人と合わせていく」など、次の大切な社会的発達につながっていくことなど、子どもと関わる人は、それをわかっていて教えるのと、わかっていないで教えるのでは、全然違ってくると思います。
――齊藤さんのマンガは、ストーリーや状況がリアルで、まさに子育て経験がある方ならではだと思いました。
齊藤:子育て中は、悩みも多かったので、自分が経験したことから「こんなこともある、あんなこともある」って思いながら描いていました。
湯汲:読んでいて面白かったです。とってもリアルだなって思いました。
――今回、この本で取り上げた「関わりことば」には、「上手」「大きくなったね」「ありがとう」のように、子どもを認める言葉かけも多く含まれていますね。
湯汲:認められたいという気持ちを「社会的承認欲求」といいます。子どもは承認欲求が満たされないと不安定になります。できるだけ子どもには「ありがとう」を言いましょう、と本にも書きましたが、「ありがとう」は子どもに「自分は役に立つ存在」ということを伝え、精神的に安定します。親は小さいころからそういう視点で子どもを見ていくことが大切だと思います。
齊藤:今回、マンガを描いていて、親って無意識のうちに、縦糸と横糸を細かく編むように毎日丁寧に子どもに物事を教えていって、少しずつ成長を進めているのだなぁと感動しました。こうやって築いた土台があれば、子どもが思春期などに自分を否定されることがあったとしても、それを跳ね返していけるような力がついていく。やっぱり土台ができていないと崩れてしまう。最近は、そういう子が多いのかなって感じがします。
湯汲:人間は連続体なので、6歳になったからとか、12歳になったから、というように変身するわけではありません。毎日の積み重ねがあって、先に進めます。だからこそ、「判断基準」をひとつひとつクリアしていかなければならない。子どもが理解・納得して、当たり前にしておかないと、どこかでまたひっかかってしまうのです。先日、自分のやりたいことを優先して順番が守れず、すぐけんかしてしまう6歳の男の子がいました。その子は知的には全然劣っていないし、社会性もある。しかし、「順番を守る」というのは、通常3歳でできるようになることですが、この「順番」の理解をクリアしていない。クリアしていないと、集団に入っていけないから学校でもうまくいかなくなってしまいます。
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